近所に住むおばあちゃんが亡くなった。
実の祖母ではないが、徒歩2分で行ける距離に住んでいて小さい頃から可愛がってもらった。名前はサクちゃんという。若い頃にご主人に先立たれ、子どもを持たなかったので長いことひとり暮らしだった。畑仕事、草刈り、近所付き合い、日用品の買い物も自分ひとりでやらなければならないから、80を超えてもしっかりしていて現役ドライバーだった。
私が実家に戻ってきてからは、息子のことをよくよく可愛がってくれて、会うたびにお菓子やおもちゃをたくさん頂いた。息子も幼いながらにそれをちゃんと理解していて、おしゃべりや踊りなどできるようになったことを次々に披露してはサクちゃんを喜ばせていた。あまり笑わない人だったけれど、息子の前ではよく口を開けて楽しそうに笑っていた。その度に大人にできないことを難なくやってのける子どもの力ってすごいなと思った。
そんなサクちゃんが6月末、腰が痛いと入院することになった。すぐ戻ってくるつもりだったようだが腰痛が良くなった頃に肺炎が発症し、入院して2ヶ月経たずで帰らぬ人となってしまった。
あまりに急な出来事に気持ちが着いていかず、こんなにあっけなく人は死んでしまうんだと思った。つい数ヶ月前まであんなに元気だったのに。
それはお盆の真ん中の暑いお天気の日で、もしかしたら先立ったご主人がお迎えに来たのかもしれない。もう苦しまなくていい、寂しい思いもしなくていい、こっちにおいで、と。
そう思うことで私の中で腑に落ちた。そしてサクちゃんからは、後悔なく生きよというメッセージを受け取った。明日この世の終わりがやって来るかもしれない、それを忘れずに日々精一杯生きなさい。
最期のお別れに会いに行った時のサクちゃんは、とても穏やかできれいな顔をしていた。しっかりとした意思のある眉毛をして、ほんのり赤い紅がのった口もとは少し笑っているようにも見えた。